会場へ着くと、まずは自分の担当テーブルを確認。
上座に立ち、お客様をお迎えする体制を整えます。
いよいよドアオープン。
入口に近いスタッフから順に「いらっしゃいませ」と言ってから、一礼。
発声とお辞儀を同時にすると声がお客様に届かないため、区切りをしっかりつけることを意識します。
この「いらっしゃいませ」を、波のように途切れることなく繋げていくことを
「波うち」と呼んでいます。
「波」と聞いて、どのような情景を思い浮かべるでしょう。
私が想像する波は、水面が輝き、優しくおおらかで、心地よい。
誰が名付けたのか今では分からないけれど、
私はこの「波うち」という呼び名がとても好きです。
たおやかなリズムと、優雅さ、やさしさが感じられる。
黒澤明監督はオーディションの際、
役者に3つの言葉を言わせたそうです。
「いらっしゃいませ」
「ありがとうございました」
「かしこまりました」
気持ちを込めなければ相手に伝わらず、
相手にも抜け殻の言葉であることが見抜かれてしまう。
ありふれた言葉は記号になりがちで、
では気持ちを込めるということはどういうことなのか、
私たちの仕事にふさわしい挨拶とはどんなものなのか、
新人スタッフに考えてもらっています。
誰も気にしていない、当たり前の、
けれどもおろそかにしがちな要素にこだわることは、
人間の機微(やさしさ、おもいやり)を対価に代える者として、
とても大切なことです。