江戸時代中期に出版された、貝原益軒(かいばらえきけん)による書「養生訓」。
心と身体を相関で捉え、健やかな生き方へと導く指南書です。
「せず」という言葉が多く使用されていて、
時空を超えて、気高く天命を全うした偉人から戒めを受けているようで気が引き締まり、
それでいて古文の美しい響きが胸に沁み、魅了されています。
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心をしづかにしてさはがしくせず、
ゆるやかにしてせまらず、
気を和(やわらか)にしてあらくせず、
言(ことば)をすくなくして声を高くせず、
高くわらはず、
つねに心をよろこばしめて、
みだりにいからず、
悲(かなしみ)をすくなくし、
かへらざる事をくやまず、
過(あやまち)あらば一(ひと)たびはわが身をせめて二度悔(くやま)ず、
只天命をやすんじてうれへず、
是心気(しんき)をやしなふ道なり。
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心は静かにして騒がしくせず、
緩やかにして忙しくせず、
気を和らか(やわらか)にして荒くせず、
ことばを少なくして声を高くせず、
高く笑わず、
いつも心を喜ばせて、
むやみに怒らず、
悲しみを少なくし、
戻らないことを悔やまず、
過失があれば一度は自分を責めて二度と悔やまない。
ひたすら天命に充足してくよくよしない。
これが心と気を養う道である。