この世を去った私から
あなたに贈る42行。
義父が亡くなる数日前にこの詩に出会い
縁のはたらきを感じました。
海外では故人を偲ぶ場で
広く読まれているのだとか。
優しい言葉のつらなりは
残された人の心を優しく癒しますが、
自分を去りゆく者に置き換えたとき、
果たして私はこのような言葉を残せるような
生き方をしているだろうか、と
問われているようにも感じます。
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さよならのあとで
死はなんでもないものです。
私はただ
となりの部屋にそっと移っただけ。
私は今でも私のまま。
あなたは今でもあなたのまま。
私とあなたは
かつて私たちが
そうであった関係のままで
これからもありつづけます。
私のことをこれまでどおりの
親しい名前で呼んでください。
あなたがいつもそうしたように
気軽な調子で話しかけて。
あなたの声色を変えないで。
重々しく、悲しそうな
不自然な素振りを見せないで。
私たち二人が面白がって笑った
冗談話に笑って。
人生を楽しんで。
ほほえみを忘れないで。
私のことを思ってください。
私のために祈ってください。
私の名前がこれまでどおり
ありふれた言葉として呼ばれますように。
私の名前が
なんの努力もいらずに自然に
あなたの口の端にのぼりますように。
私の名前が
少しの暗いかげもなく
話されますように。
人生の意味は
これまでと変わってはいません。
人生はこれまでと同じ形でつづいています。
それはすこしも途切れることなく
これからもつづいていきます。
私が見えなくなったからといって
どうして私が
忘れられてしまうことがあるでしょう。
私はしばしあなたを待っています。
どこかとても近いところで。
あの角を曲がったところで。
すべてはよしです。
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